債務整理~雑感~

司法書士山口達夫事務所 補助者ブログ

自己破産


自己破産・所有不動産のないことの証明

2010年4月28日 - 20:42 | 投稿者 admin

 東京地裁の立川支部では、破産を申立てる場合、所有不動産がある場合にはその登記簿謄本を提出する必要がありますが、所有する不動産が無い場合には特に何も添付資料はありません。
 
 一般に、「ある」ということの証明に比べて、「ない」ということの証明は難しいと言われています。

 例えば、地球以外の宇宙のどこかに何らかの生命が存在しているかもしれない以上、「地球外生命体がいない」ということを完全に証明することはほぼ不可能でしょう(宇宙全体を隈なく調査し地球外生命体がいないことを証明する必要がありますが、これは不可能ですよね。)。

 これに対し、例えば火星に微生物が存在したということを発見できれば、「地球外生命体がいる」という証明はできるのです。

 このように、ある事実が「ない」ということの証明の困難さから、「ない」ことを証明することを『悪魔の証明』と呼んだりもします。

 このことからすれば、所有する不動産が無い場合にその証明資料を要求しない立川支部の運用は妥当と言えます。
 
 しかし、東京地裁以外のある地方裁判所への破産申立ての資料には、所有不動産のないことを証明する資料が要求されていました。

 とは言っても、住民票のある市における固定資産の課税台帳の提出が求められただけですが(固定資産課税台帳に課税対象となる不動産がなければ、少なくともその市内には、所有する不動産がないという証明になります。)。

 でも、もし完全に所有する不動産がないことを証明する必要があるのであれば、全国の全ての市区町村から同様に課税台帳を取ることが最低限必要となるでしょう。A市に住民票がある人がA市には不動産を所有していないが、B市に不動産を所有しているということは当然考えられるのですから。

 しかし、これではまさに『悪魔の証明』になりかねません。

 そこで、少なくとも住民票のある市において、所有不動産が本当にないのかということぐらいは確認しておきたいということのようです。
 
 破産申立てと一口に言っても裁判所ごとに運用が違うものなんですよねぇ。。

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自己破産・ギャンブル(パチンコや競馬等)

2010年4月21日 - 18:49 | 投稿者 admin

 破産法252条1項各号には、破産を申し立てても債務の免責が認められないという免責不許可事由が定められており、その中に、「浪費又は賭博その他の射幸行為による著しい財産減少等」という規定があります(同条項4号)。

 つまり、パチンコや競馬といったギャンブルが原因で作った借金については、債務の免責を認めないということです。

 『借金したお金で好き放題ギャンブルで遊んで、全部スッてしまい借金が返せないから破産で免責してもらおう。』ではあまりに虫が良すぎますよねぇ。

 そこで、上記のような免責不許可事由が定められているわけです。

 しかしながら、『積極的に借金してまでギャンブルはしていないけど、全くパチンコをやらなかったわけじゃない』という方で破産申立てを検討されている方もいらっしゃることでしょう。

 借金したお金を全てギャンブルにつぎ込んだというのであればまだしも、小遣いの範囲内で月に2,3回、突っこんでも2,3万円で勝ち負けで計算すれば、月に1,2万負けているかどうかという程度であれば、その他の状況にもよりますが、十分に免責は認められると思います。

 ですので、自己破産申立てを検討されていらっしゃる方で、多少パチンコや競馬をしていたという場合であっても、まずはご相談してみて下さい。

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雑感

2010年4月20日 - 18:46 | 投稿者 admin

 現在、事務所で受任している破産案件のうち、3件が申立て直前の状況となっており、書類作成をサポートしている私もかなりハードな日々となっています。

 なもので、このブログの更新もままならず今日はこれにて失礼します。

 この後、さらに、個人民事再生申立ての準備もしないと・・・。

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自己破産~破産後の借入れ~

2010年4月15日 - 9:49 | 投稿者 admin

 総量規制が実施されると、これまで何とか複数の金融機関からの借入れによる自転車操業で持ちこたえていた方の資金繰りが回らなくなり、自己破産者が増えるのではないかといった予測がされています。

 そして、自己破産すると一定期間その事故情報が残るので(いわゆるブラックリスト)、その後の借入れは困難になります。

 この点に付き、先日、破産者への融資に関するニュースが出ていましたので、以下に転記します。

 『6月に予定される改正貸金業法の完全施行を前に、労働金庫の上部組織にあたる全国労働金庫協会(東京都千代田区)が、自己破産者を対象にした融資制度の導入を検討していることが6日、分かった。同法の完全施行の影響で自己破産する多重債務者が増えることを想定し、勤労者向けの生活支援を強化する。新たな「セーフティネット(安全網)」として注目される。

 新しい融資制度は、勤務先のリストラや倒産などで、経済的な困難に追い込まれた人の生活資金を支援する。

 自己破産のほか、任意整理や個人再生なども融資の対象になるが、ギャンブルなど遊興費で借金を作った人は対象外だ。

 融資の原資は、各労金の資本金などから出す。会員向けのモデルケースとしては、最高500万円までを10年以内に返済するプランなどを想定している。担保や連帯保証人は不要で、労金の指定機関が債務を保証する。

 金利は、保証料込みで年利8.75%。非会員向けにも、最高50万円を5年以内に返済するモデルを提示する。

 自己破産は借金が帳消しになるものの、信用情報機関に「事故情報」として登録され、新たにクレジットカードを作れなくなったり、焦げ付きを恐れて、金融機関が新規の貸し出しに応じなくなる。

 ただ、協会でも、融資の審査に関しては、勤務先のリストラや倒産といった理由以外に、「これまで労金からのローン返済が滞っていないか」などについて、厳格に行うとしている。

 6月の改正貸金業法の本格施行では、年収の3分の1超の借り入れができなくなる「総量規制」が導入される。

 このため、多重債務者の中には、借金を重ねることが不可能になり、自己破産するケースが増えると指摘されている。

 労金のセーフティーネットに関しては、金融庁の「貸金業制度に関するプロジェクトチーム(PT)」が3月まとめた座長試案でも、労金が一定の役割を果たすことを求めていた。

 ■労金が検討している融資制度の案
 ▽対象は労金の会員・非会員
 ▽自己破産時に労金でローンなどを組んでいないこと
 ▽年収は最低150万円以上、勤続1年以上
 ▽返済比率が収入の3割

 ■労働金庫 労金法を根拠に設立された金融機関で、労働組合(労組)や生活協同組合(生協)、組合員が会員になって出資する非営利組織。預金の受け入れや、出資金と預金をもとにした貸出業務を行う。預金、為替などは会員でなくても利用できる。現在、全国に13の労働金庫があり、約670の店舗を展開している。会員数は、2009年3月末現在で個人と団体合わせて約18万2700人、預金総額は15兆7500億円。全国労働金庫協会は上部組織にあたる。』(フジサンケイ ビジネスアイ 平成22年4月7日掲載記事より転記)

 破産後にどうしても借入れをする必要が出てきても、事故情報の関係で正規ルートでは借り入れることができず、仕方なくヤミ金に手を出す人が増えるのではないかといった懸念があるのですが、上記のような救済策が少しでも増えればそういった懸念も少しは解消されるのではないでしょうか。。

 総量規制の導入を決めた国も、その一方で総量規制のいわば”犠牲”となってしまう方の保護を積極的に検討してもらいたいものです。

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自己破産~年金・失業保険~

2010年4月05日 - 18:25 | 投稿者 admin

 自己破産を検討されている方から、年金や失業保険との関係についてのことを聞かれることがあります。「自己破産をすると、年金や失業保険が差押えられたりするのでしょうか?」とか、「将来の年金支給額が減額されたるするのでしょうか?」といった質問です。

 答えはノーです。自己破産しても、年金や失業保険が差押えられたり、将来支給される年金の額が減額されることもありません。

 年金、失業保険、生活保護費などは、差押禁止動産として法律で差押えることが禁止されていますので、自己破産をしても差押えはもちろん、将来支給される額についても影響は受けないのです。

 もっとも、借金の返済で年金を担保にしている場合は、その状況によっても変わることがありますので注意が必要です。

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自己破産~親族・保証人との関係~

2010年3月26日 - 16:54 | 投稿者 admin

 自己破産の申立てに関して、「家族にも何らかの不利益があるのか?」といったご質問をよく受けます。

 結論から言うと、破産することにより被る不利益は破産者のみが受けるもので、破産者と親族関係にあるというだけでは、何らの影響も受けません。保証人になっていない限り、親族だからといって支払義務もありません。
 
 例えば、自己破産をすると、その後7年間程は破産した者の名義ではクレジットカードが作れませんが(いわゆる「ブラックリストに載った状態」なので。)、その破産者の妻などの親族名義であれば問題なくカードが作れます。また、親族の進学、就職、結婚等にも影響はありませんし、親からの財産を相続できなくなるといったこともありません。

 しかし、親族が保証人である場合には、破産者が債務の免責を受けたからといって、保証人も同じく免責の恩恵を受けるというわけにはいきません。この場合は、破産後も保証人である親族は債務を負担し続けます。保証人が親族の方でない場合も同じです。

 すなわち、主債務者が破産しても、免責の効果は破産申立て人である主債務者にのみ及び、保証人には免責の効果が及びませんので、破産後も保証人は債務を負い続けるのです。

 よって、破産をしようと考えている方で、保証人を立てられている場合には、事前に保証人へ事情を説明しておく必要があるでしょう。場合によっては、保証人もその債務を返済できず、債務整理手続きに入る場合もあるでしょう。

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自己破産~生命保険契約の維持~

2010年3月25日 - 12:47 | 投稿者 admin

 破産を申立てても、一定限度で財産の所持が認められる(この財産を自由財産といいます。)というお話は以前にしました。
例えば、現金は99万円までならば、手元に残すことができます。

 現金以外にも、預貯金や生命保険の解約返戻金等を合わせて20万円までならば、自由財産として破産申立ての前後を通して所持し続けることができます。

 では、破産申立て時における生命保険の解約返戻金が20万円を超えている場合、その生命保険契約は解約・現金化して債権者への分配に充てる必要があるのでしょうか?

 このままでは、原則として、解約する必要があります。

 もっとも、その保険契約者が利用できる契約者貸付という制度によって返戻金額を下げることでその生命保険を解約せずに、維持し続けることもできます。
 
 例えば、解約返戻金が35万円ある場合、契約者貸付の制度で17万円の借入れをします。すると、契約返戻金は借入れ金額との差引きで18万円となり、自由財産の範囲内となるので解約せずに維持し続けることができるのです。

 しかし、この契約者貸付の制度もその契約状態に応じて貸付金の限度額があるため、解約返戻金を20万円以内にすることができない場合もでてきます。上記の例でいえば、貸付限度額が12万円だとすると、元々35万円だった解約返戻金は、差引き後23万円となり、自由財産の範囲には収まらないということです。

 現在破産申立て準備中の案件で、まさにこのケースのものがあります。この依頼者の方の解約返戻金は、契約者貸付の制度を使っても自由財産の範囲に収めることができないので解約せざるを得ないような状況ではあるのですが、長く掛け続けてきた保険であるし、ここで解約しても年齢的に同等な条件の保険に入ることは難しいということで、どうしても維持したいというお気持ちがあります。

 そこで、現在裁判所とも協議をしたりしていますが、どうにか保険を解約せずに破産申立てできそうな道筋が見えてきました。

 この続きはまた今度報告したいと思います。

 

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自己破産申立て・書類作成

2010年3月21日 - 13:33 | 投稿者 admin

 今日、数カ月にわたり準備してきたご夫婦お二人の破産申立ての書類作成が完了し、来週中には裁判所へ申立てることになりました。

 司法書士は地方裁判所への申立て代理権がないため、破産申立てについては、本人申請のための書類作成支援という形を取るわけですが(その分、代理人として破産申立てを行う弁護士の報酬よりも費用は安く上がると思います。)、詳細な聞き取り調査をしてしっかりとした書類を作成するため、ご本人が申立てるといっても特別な心配はありません。

 スムーズに手続が進み免責許可決定が出て、早く生活を再建できることを祈っております。

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自己破産~自由財産とは~

2010年3月09日 - 13:47 | 投稿者 admin

 「破産」というと、めぼしい財産は全て債権者へと渡り、手持ちの財産は一切なしというイメージがあるかもしれません。
 
 そもそも、法が破産を認めた目的の一つに『債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ること』があります(破産法第1条)。
 
 もし、破産者には金銭等の財産の所持が一切認められないとすれば、破産後の生活再建はかなり難しくなってしまいます。そこで、破産をしても破産者の手元に残すことができる財産が認められています(この破産者に所持を認めた財産を「自由財産」といいます。)。

 現行の破産法では、必要生活費の3カ月分として、現金99万円を手元に残したまま破産の申立てができるとされています(破産法第34条第3項参照。)。すなわち、現金で99万円所持したまま破産の申立てをしても、この現金が債権者へ分配されることはなく破産手続き完了後もずっと手元に所持し続けることができるのです。

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