東京地裁の立川支部では、破産を申立てる場合、所有不動産がある場合にはその登記簿謄本を提出する必要がありますが、所有する不動産が無い場合には特に何も添付資料はありません。
一般に、「ある」ということの証明に比べて、「ない」ということの証明は難しいと言われています。
例えば、地球以外の宇宙のどこかに何らかの生命が存在しているかもしれない以上、「地球外生命体がいない」ということを完全に証明することはほぼ不可能でしょう(宇宙全体を隈なく調査し地球外生命体がいないことを証明する必要がありますが、これは不可能ですよね。)。
これに対し、例えば火星に微生物が存在したということを発見できれば、「地球外生命体がいる」という証明はできるのです。
このように、ある事実が「ない」ということの証明の困難さから、「ない」ことを証明することを『悪魔の証明』と呼んだりもします。
このことからすれば、所有する不動産が無い場合にその証明資料を要求しない立川支部の運用は妥当と言えます。
しかし、東京地裁以外のある地方裁判所への破産申立ての資料には、所有不動産のないことを証明する資料が要求されていました。
とは言っても、住民票のある市における固定資産の課税台帳の提出が求められただけですが(固定資産課税台帳に課税対象となる不動産がなければ、少なくともその市内には、所有する不動産がないという証明になります。)。
でも、もし完全に所有する不動産がないことを証明する必要があるのであれば、全国の全ての市区町村から同様に課税台帳を取ることが最低限必要となるでしょう。A市に住民票がある人がA市には不動産を所有していないが、B市に不動産を所有しているということは当然考えられるのですから。
しかし、これではまさに『悪魔の証明』になりかねません。
そこで、少なくとも住民票のある市において、所有不動産が本当にないのかということぐらいは確認しておきたいということのようです。
破産申立てと一口に言っても裁判所ごとに運用が違うものなんですよねぇ。。